寝ごこち科学研究所

ビジネスホテル宿泊時における睡眠状態と睡眠環境に関する調査

syukuhakuimageホテル宿泊時には、通常の環境と異なる場所で睡眠をとることになり、そのことが原因でいつもより熟眠感がなかったり、朝起きたときに何となく身体がだるいというようなことを経験された方も多いのではないでしょうか。

そこで、本調査ではホテルに宿泊したときの睡眠状態と気になる睡眠環境を把握するためにアンケート調査を実施しました。

また、通常の客室と睡眠環境に留意した客室に宿泊したときの睡眠状態・睡眠環境を比較検討しました。

研究1

対象

  • 関西にあるビジネスホテル4社の宿泊者を対象にアンケート調査を実施しました。
    有効回答数は、825名(男性647名、女性169名、不明9名:平均年齢43.7±12.1歳)でした。

方法

  • 同じ内容のアンケートを用いて、2007年7月~8月(夏季)と2008年1月~2月(冬季)に各ホテルに宿泊した人を対象に行いました。

結果

  • 「熟眠度」について、夏季・冬季で比較した結果、季節間で差は見られませんでした(図1)。
    自宅に比べ熟睡できなかった人の割合は、夏季・冬季ともに1割程度でした。

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「寝付きにかかる時間」について、季節間で比較したところ差は見られませんでした(図2)。「熟眠度」と違い、「寝付きにかかる時間」では、自宅で眠るのと比べ「変化なし」と回答した人が半数以上でした。また、自宅で眠るより「(寝付きにかかる時間が)非常に長かった」「少し長かった」と回答した日とは、2割程度存在しました。

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「起床感」について比較すると、冬季の方が夏季より「良かった」「少し良かった」と答えた割合が多く、統計的に有意差傾向が認められました(p<.1)(図3)。

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図4に宿泊時に気になった睡眠環境について季節間で比較したものを示しました(複数回答可)。「睡眠環境で気になることはなかった」と回答した割合は、冬の方が50.8%と多い結果でした(p<.01)。また、「湿度」について夏は7.2%だったのに対し、冬は16.7%と多い割合でした(p<.001)。

これは、冬季の乾燥について気になったという意見があったので、それが影響していると考えられます。その他、「布団」では冬で気になる傾向が多く(p<.1)、夏季では「光」につちえ気になる割合が多い結果でした(p<.1)。また、ホテルに置いてある「寝巻き」について冬で気になる割合が多ことが分かりました(p<.05)。

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研究2

対象

  • 調査期間中、快眠客室・一般客室に宿泊し、アンケートに回答した526名(男性427名、女性89名、不明10名:平均年齢44.4±12.0歳)

方法

  • 研究1で用いたアンケートと同様のものを用い、寝具に留意した客室と一般の客室での比較検討を行いました。
  1. 一般客室...通常の客室
  2. 快眠客室...寝具(ベッド、掛け・敷き寝具、枕など)に留意し、ホテル内客室の中で最も静かな場所に設置。

①②の2条件を設定し、各宿泊者のホテル宿泊時における睡眠状態と気になる睡眠環境について比較しました。

結果

「熟眠度」について一般客室・快眠客室を比較したところ、自宅より熟眠できた人の割合が一般客室より快眠客室で多かったことが分かりました(p<.05)(図5)。

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「寝付きにかかる時間」を一般・快眠客室で比較した結果、快眠客室で「少し短かった」「非常に短かった」と回答した人が約3割と一般客室より多いことが分かりました(p<.001)(図6)。これは、寝具等の睡眠環境に留意することで、寝付きにかかる時間が短縮できたと考えられます。

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「起床感」について一般・快眠客室で比較したところ、快眠客室で「良かった」「少し良かった」と解答した割合が一般客室より多く、半数以上の人が起きた時の気分が良かったと感じていることが分かりました(p<.001)(図7)。

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図8に宿泊時に気になった睡眠環境について、一般客室・快眠客室で比較した結果を示しました。これをみると、「布団」の項目で一般客室では8.1%が気になると回答していたのが、快眠客室では3.3%と少なく、統計的にも有意差傾向が認められました(p<.1)。

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以上のことから、ホテル睡眠時における一般・快眠客室での睡眠状態は、「熟眠度」「寝付き」「起床感」のどの項目においても「快眠客室」宿泊者で良好と回答している人が多いことが分かりました。また、気になる睡眠環境については「布団」の項目でのみ、「快眠客室」宿泊者の方が気になると回答した割合は少ないという結果でした。

つまりこのことから、寝具に留意した快眠客室は、宿泊者の睡眠の質向上に役立つ可能性が示唆されました。今後は、温度・湿度や騒音、光などの改善案も提案し、ホテルのより快適な客室作りを考案していく必要があると考えられます。

※本調査は、2008年福島県郡山市で開催されました第33回日本睡眠学会学術集会で発表されたものです。
※本調査の内容を無断で転載しないでください。

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