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寝ごこち科学研究所

高温多湿環境条件下での敷き寝具素材による
寝床内気候と入眠過程への影響に関する研究

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敷きパッド素材やマットレスに関する報告は多くありますが、異なるシーツやベッドパッドの素材が実際の寝つきや眠りに与える影響について、検討したものはあまりありません。

イワタでは、シーツおよびベッドパッドの素材の違いが寝つき、体温、布団の中の温湿度に及ぼす影響を検討することを目的として、人工気候室での高温多湿環境(日本の夏をイメージして)における日中の眠りを測定し、検討しました。

対象

  • 心身ともに健康な成人男性3名

寝具条件(※Table1参照)

  1. 麻パッド&麻シーツ(条件I:株式会社イワタ製)
  2. ポリエステル敷きパッド&綿シーツ(条件P)

上記2条件を設定し、人工気候室(29℃、RH70%)にて日中に仮眠をとるスケジュールで、脳波、皮膚温、布団の中の温湿度やアンケート調査などを行いました。

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結果

睡眠内容(※Table2参照)

麻素材の条件Iで寝つきにかかる時間が、条件Pの半分でした。
また、深い眠り(睡眠段階SWS)の時間が条件Iで長いことも分かりました。

⇒つまり、高温多湿な環境での寝つきについて、ポリエステル素材の敷きパッドに比べて麻素材を使用した敷きパッドの方が、覚醒から眠りへのスムーズな移行と深い眠りの出現を促すことができたと推測できます。

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皮膚温(※Fig.1参照)

Fig.1は2条件の皮膚温の変化を示したものです。青い折れ線が麻パッド&麻シーツ条件、赤い折れ線グラフがポリエステルパッド&綿シーツ条件を示しています。

Fig.1をみると、背面では、麻パッド&麻シーツを使った条件I(青い折れ線グラフ)にて温度の上昇が抑えられていることが分かりました。手と足の部分の皮膚温は、条件Iで上昇していることが分かりました。

⇒つまり、麻パッド&シーツを使用した条件Iでは、手足から熱をしっかりと放散していたと考えられます。一方で、背中の温度の上昇は抑えることができていました。

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布団の中の温湿度(※Fig.2)

Fig.2は2条件の布団の中の温湿度の変化を示したものです。青い折れ線が麻パッド&麻シーツ条件、赤い折れ線グラフがポリエステルパッド&綿シーツ条件を示しています。

Fig.2を見ると、背中の部分の布団の中の湿度は(グラフ上部参照)、睡眠が経過し、汗の量が増えるにつれて条件P(ポリエステルパッドを使用)にて湿度が上昇していました。

腰の部分の湿度を見てみると(グラフ下部参照)、背中の部分と同じように、汗の量が増える60分以降、条件P(ポリエステルパッドを使用)で湿度が上昇していることが分かりました。温度も条件Pで高くなる傾向にありました。

⇒麻素材を用いた麻パッド&麻シーツ条件の方が汗が多い睡眠開始2時間までの背中と腰の部分の湿度の上昇を抑え、布団の中の湿度を適度に調整する働きに優れていることが分かりました。

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アンケート結果(※Fig.3)

2条件の寝具を用いた時の、寝具の評価についてアンケートをとった結果をFig.3に示しました。青い棒グラフは麻パッド&麻シーツ条件(条件I)、赤い棒グラフはポリエステルパッド&綿シーツ(条件P)を示しています。

Fig.3をみると、条件Iに比べて条件Pの方がシーツに接触している身体部分が暑いと評価し、乾燥させたいと感じていることが分かりました。

また、2つの寝具を使用してみて、使用した全員が条件Iより条件Pで全身が暑くなると評価していました。睡眠中の汗も全ての身体部位で条件Pの方が条件Iよりも汗をかいていると評価していました。

⇒アンケート調査でも、ポリエステルパッド&綿シーツより麻パッド&麻シーツの方が、全身の汗の量が少なく、寝具の温度や湿度の低さを体感できていたことが分かりました。

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以上の結果から、天然素材の中で最も涼しい素材であると言われている麻素材の麻パッド&麻シーツを高温多湿環境で使用すると、覚醒から睡眠へのスムーズな移行ができ、ぐっすり眠れて、より良好な眠りを得ることができる可能性を示すことができました。

暑い季節では、エアコンや扇風機を利用して部屋の温度や湿度をコントロールする人は多いと思いますが、夏の季節に適切な敷き寝具素材を選択することで、夏でもより快適な睡眠環境を作り出し、そのことがよりよい眠りにつながる可能性があると思われます。暑い夏こそ、寝具を見直してみるのも良いのではないでしょうか。

※本研究は、2012年6月28日~30日に開催されました日本睡眠学会第37回定期学術集会 (パシフィコ横浜)にて発表されたものです。
※本研究の内容を無断で転載しないでください。

 

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